
未成年が作成したというランサムウェアの詳細をトレンドマイクロが分析 52
ストーリー by hylom
稚拙で不備はあるとはいえ機能は揃っている模様 部門より
稚拙で不備はあるとはいえ機能は揃っている模様 部門より
大阪府の中学3年生男子生徒がランサムウェアを作成したとして不正指令電磁的記録作成・同保管容疑で神奈川県警に逮捕される事件があったが(読売新聞)、この生徒が作成したと見られるランサムウェアをトレンドマイクロが分析している。
これによると、このランサムウェアはWindowsのバッチファイル機能を利用して実装されており、すべてのファイルに対してオープンソースの暗号化ツールAES Cryptを使って暗号化を行うものになっているという。
ただし、暗号化の対象は特定のフォルダのみで、すべてのファイルを暗号化するようにはなっていないとのこと。また、暗号化の鍵として使用するランダムな文字列はStackOverflow上に掲載されていたサンプルコードと同一だったという。
【冤罪】不正指令電磁的記録作成・同保管の構成要件を満たしていない (スコア:5, 興味深い)
少年は「不正指令電磁的記録作成・同保管容疑」で逮捕されたとのことですが、この少年が作ったプログラム ransomware.zip は、そもそもzipアーカイブに含まれる「最重要機密」フォルダ(このフォルダ自体がzipアーカイブにサブディレクトリとして含まれており、「最重要機密」というフォルダが既存だったとしても影響しません)の中身しか暗号化しない上、復号手段が用意されており、ランサムウェアとして機能しないことから、単なる暗号化ツールであり、そもそも不正指令電磁的記録に該当しないと解釈すべきだと個人的には思います。
しかし、法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第1回会議 議事録 [takagi-hiromitsu.jp] によると、「●ほんの少し手を加えただけで不正な指令として完成するような実体であるものは,ここでいう完成している電磁的記録,完成しているウイルス・プログラムとしてとらえるべきだと考えております。」とのことなので、当該プログラムが「不正指令電磁的記録」として解釈される可能性があります。
しかし、当該プログラムが「不正指令電磁的記録」だとしても、今回のケースでは、犯罪構成要件の「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」を満たしていないので、冤罪です。
ちなみに、少年を逮捕したのは、遠隔操作事件で「冤罪」の前科がある、神奈川県警サイバー犯罪対策課です。
立案担当者の解釈 (法務省Webサイトより) [moj.go.jp] によると、
とあり、不正指令電磁的記録作成は、不正指令電磁的記録であることを認識していない第三者の電子計算機における実行の用に供する目的でなければ犯罪の構成要件に該当しないのです。保管罪についても同様です。
少年の Twitter では プログラムの動作を動画で明示 [twitter.com] して、説明書 (ドキュメント) で動作を説明 [twitter.com] した上で配布しています。アーカイブファイル名も "ransomware.zip" であり、使用者が不正指令電磁的記録であることを認識できるようにしています。
これらの説明から、プログラムの実行者は、その動作を十分に認識できることから、犯罪構成要件を満たさないことは明らかです。
補足 (スコア:5, 興味深い)
立案担当者の解釈 (法務省Webサイトより) [moj.go.jp] に、もっと分かりやすい説明があったので引用します。
少年は、プログラムの動作を動画・文章の両方で説明しており、ファイル名にも「ransomware」を含めていることから、「事情を知らない使用者にそのファイルをダウンロード」させているわけではなく、「実行する意思のない使用者のコンピュータ上でいつでも実行できる状態に置く行為」にも該当しません。
Re:補足 (スコア:1)
いやいや、そもそも罪名は供用のほうではなく作成と保管ですよ。
Re:補足 (スコア:1)
そうですね。「人の電子計算機における実行の用に供する目的」があればよく、実際に「人の電子計算機における実行の用に供する」必要はありません。