点字コンバータBrailleConverterの作者に聞く 28
災い点字て福となす 部門より
プロジェクトの概要
Common Lispで記述された日本語、英語、その他の外国語の点字・墨字テキストの相互変換プログラム。
- プロジェクト名: BrailleConverter
- 登録日: 2008-03-04 18:30
- URL: http://osdn.jp/projects/brc/wiki/FrontPage
- プロジェクトホーム: http://osdn.jp/projects/brc/
- 動作環境: Console(Text Based)
- ライセンス: GNU General Public License (GPL)
- 言語: English, Japanese
- プログラム言語: Lisp
- プロジェクト管理者: tmatsugaki
プロジェクト管理者へのインタビュー
このソフトウェアはどんなソフトウェアですか?
CUIで点字と墨字(点字ではない普通の文字)の相互変換をするプログラムです。
プロジェクトを始めた動機は? また、どうやって始めましたか?
バリアフリーな分野で自分が貢献できる何かを探していたところ、点字に興味を持ったので変換プログラムでも作ろうかと思ったのがきっかけです。当時、すでにNFBTransというフリーの墨字→点字のコンバータが存在しており、Cで記述されているため高速でありかつ機能も多彩であるということで、まずこれを試してみることにしました。私はMacを利用しているのですが、第三者によるNFBTransの改造版にMac OS Xでの動作を謳うものがあったこともNFBTransを選んだ理由の一つです。
ところが、その改造版が何故か私の環境では動作しません。オリジナルのNFBTrans自体にも日本語非対応であったり英語の変換結果に少々変なところがあるという問題がありました。何だかいろいろ問題があって厭になったのでNFBTransを改造(バグフィクス・機能拡張)しようかと、ソースコードをざっと斜め読みしたところ、ちょっとメンテナンスが難しそうだと感じて改造は断念。ということで、結局ゼロから作ることにしたわけです。せっかくゼロから作るのですから自分が楽しく開発できることを重要視し、言語にはLispを選んで、のらりくらりと開発することにしました。
Lispを選んだ理由ですが、点字の変換ルールは結構多岐に渡るのですがデータベースの採用を迫られるほどではないので連想リストを持つ言語を採用すれば十分だと判断しました。最近流行っていることと昔挫折した悔しい経緯もあって、今回はLispでやろうと決めました。最近はフリーで立派なCommon Lispの処理系があるので本当に良い時代になったと思います。最初に開発した日本語の点字・墨字の相互変換部分の開発は比較的平易だったのですが、複雑なルールベースの省略があるグレード2英語の相互変換部分の開発では未だに手を焼いています。
このソフトウェアのターゲット・ユーザーは?
- 自分を含めて点字を学んでいる方。
- 自分を含めてLispを学んでいる方。
このソフトウェアをどれくらいのユーザーが利用しているとお考えですか?
ダウンロード数からすると、今のところほとんど0人ではないかと思います。
プロジェクトがうまく行っていると感じるのはどんなときですか?
今のところ一人プロジェクトなのと反響がないため、残念ながらそういう感じはないです。
このプロジェクトをやっていて最も驚いた出来事は?
- Common Lispの生産性が高いこと
- 国の内外を問わず、点字の仕様が迷走していること
- SourceForge.JPのプロジェクト管理環境が至れり尽くせりなこと
- DuxburyのDBT(Duxbury Braille Translator:商用の変換プログラム)に非常に永い歴史があるということ(起源はData GeneralのNovaやEclipse上で実現されたツール)
このプロジェクトで最も苦労している点は?
- グレード2英語の変換結果を検証するのが結構大変です。海外で定番の点字変換プログラムであるDuxburyのDBTは高価なので、オープンソースのNFBTransの変換結果を参考にしてBrailleConverterの変換結果の検証をしているのですが、NFBTransの変換結果(特に点字→墨字)に問題があるのです。
- 国内外での点字の標準化の動向が不鮮明であることも問題です。規格がどう転ぶか分からないので、BrailleConverの開発では将来の変更へ迅速に対応できるよう、シンプルさを維持するように努めています。
- グレード2英語の変換ルールには矛盾というか一意性にかける部分があるように思われます。自分が変換ルールをきちんと理解できていないので間違っているかも知れませんが、上記のNFBTransの変換結果の問題もこれに起因しているように感じています。
- 開発マシンのPowerMac G4 Cubeの処理速度が遅く、最新バージョンのOS Xも使用できないこと。
今後のプロジェクトの方向性は?
- UEBC(Unified English Braille Code:統一英語点字記号)その他の言語フォーマットヘの対応。
- 日本語の分かち書き機能の追加。(別プログラムで実装するつもりです)
- 点字プリンタその他の機器の制御機能の追加。(これも別プログラムで)
どのような要望がユーザーからあがっていますか?
- よそ様からは特にないです。
- 大きな懸案の1つとして「1.8GHzのPentium MでSBCL(Steel Bank Common Lisp:高速処理で評判の高いオープンソースのCommon Lisp処理系)使っても遅い変換速度はどうにかならんか?」というのがあります。
このソフトウェアあるいはプロジェクトについて誇れるところは?
- Common Lispのお陰ですが、リーダーを利用することで対話的に変換できること。
- これもCommon Lispのお陰ですが、プログラムの構造がシンプルであること。実際に難しいことをしているわけではないので当然なのですが、正規表現/オブジェクト/構造体の使用を見送りました。
- 内部の点字標準フォーマットを点字のビットパターンを基調に構成しているので、点字のシンボルに依存した処理などの将来の拡張を容易にしていること。基本的な考え方は画像コンバータのpbmplusなどに習ったもので、内部の標準フォーマットを経由した変換方式を採用しています。この方式は若干スピードを犠牲にしますが、合理的な内部処理が可能であると考えています。
- グレード2英語の変換においては辞書を使った学習機能を持っています。コストのかかる変換を幾度も繰り返さないようにするため導入した仕組みなのですが、今のところ目覚ましい効果は出ていません。
このプロジェクトでどこかやり直せるとしたら、どこを変更したいですか?
特にないです。
あなたの本業は何ですか?
中年プログラマです。
あなたの開発環境は?
- Mac OSX 10.4.11 (PowerMac G4 Cube), GNU CLISP 2.43
- Debian GNU/Linux etch (ThinkPad X32), GNU CLISP 2.41
バージョン・ヒストリー:
まだpre Alphaの段階であり、バグフィクスをタグ付きで管理しているだけというのが実情ですので、すみませんが割愛させていただきます。
このプロジェクトに貢献するには?
設計・開発・テスト・助言でもなんでも助かります。
SourceForge.JPへの要望をお聞かせください。
すばらしいプロジェクト管理環境を無償で提供していただき、大変感謝しております。さらなる進化を期待しています。
(取材日:2008年4月11日)
Re:よそ様からは特にないです。 (スコア:2, 興味深い)
個人的には、点字文法の階層構造とHTMLの階層構造は結構相性がいいんじゃないかと思いますので、HTMLソースファイルを入力すると文書の階層構造(見出しの深さとか箇条書きとか)を保ったまま点字に変換して出力する機能なんかがあると面白いんじゃないでしょうか。(せめて基本的なタグだけでも対応する形で)
#本当は数式対応と言いたいが、無茶苦茶難しいのが目に見えているので言わない
Re:よそ様からは特にないです。 (スコア:2, 参考になる)
自分が現役で点訳していた大学生の頃は、PC環境はMS-DOS全盛でWindows 3.1が「すごいソフト」扱いだった時代でしたが、当時の一般的なノートPCでも自動点訳ソフト「EXTRA」 [extra.co.jp]のDOS版でテキストファイル→2級英語点字データの変換を普通にやっていました。
なので、懸案事項の についてはきっと解決方法があると思いますので、作者さんには是非とも頑張って頂きたいなぁと思っています。
#アイデアも何もなく言いっ放しで恐縮ですが…
懐疑的 (スコア:1, 参考になる)
このプロジェクトを否定する訳ではありませんが、「点字で出力する」のと「盲目の人が使える」のはだいぶ違うのに、その点がこのインタビューでは全く無視されていることを指摘したいと思います。
Re:懐疑的 (スコア:1)
実用面で優れているかどうかはよく知りませんが、自分はないよりマシな気がしてしまうんですけれども。読み上げでも点字ディスプレイでも使いやすい方を選べる方が片方しかないよりはいいと思うんですが。点字を読める人がこの世に存在しないということであればともかく。
最後についてはプログラムとしてのインタビューなので指摘しなくて当然な気もします。
◆IZUMI162i6 [mailto]
Re: (スコア:0)
その通りに点字が分からないとして、その理由は「成人になってから盲目になった」からではなく、学んでいないからのように思います。 それとも成人になると点字の習得が困難なのでしょうか?
このインタビューで言及する必要性がよく分かりません。 それ以前に「盲目の人が使える」というのは何を使う話ですか?
Re: (スコア:0)
その通りです。
ここで言及しなければ、どこで言及するんですか?
むしろこちらが聞きたいですね。
#あなた、盲目の人用のシステム開発に携わったことあります?
Re:懐疑的 (スコア:4, すばらしい洞察)
親コメの方の仰る通り、一般的には成人以降に点字を一から習得するのは困難とされています。
以下補足ですが、困難である最大の要因は点字が触読文字であるという点です。最近は公共施設で点字の案内板を見かけることも増えましたので一度試してみられるとよいかと思いますが、人差し指の平で覆える程度のスペースに配置されている6点の凹凸を正しく読み取るだけでも素人の触覚ではとてつもなく大変です。それを実用的な速度と精度で実行できるだけの感覚を大人になってから養う必要が生じるわけですから。
#点字の規則を学ぶ労力も必要ですが、触読の習得に比べればまだ低いハードルでしょう。
#実際、点字翻訳ボランティアの人たちは大抵大人になってから点字を学んでいるわけで。
という点は確かに重要な指摘なのですが、件のインタビューは技術面の紹介を目的としたもののようですから、話題に水を差さない、もしくは話の焦点をぼかさないためにあえてその点には触れなかったという可能性も少なくないと思います。
それに、盲目の人全体における点字使用者の割合が下がったとしても、盲目の人が補助器具を使わずに独力で読み得る(仮に効率が悪くても)物質的に実現された「文字」としての点字の重要性は失われるものではないでしょう。
#点字の利点を包含した改良方式が出現したとしたら話は別ですが。
そのような観点から、私は、上記の問題点の指摘がないという理由で今回のインタビューの価値が低くなるとは考えません。
Re: (スコア:0)
これってつまり、
ソフト層じゃなく点字ディスプレイというハード層の問題だよ、
ということも意味しますね。
そういう意味では確かに、ソフトの中の人に言ってもしょーがないとも言えるのかな。
それにしても触読以外の方法は無理なんでしょうか?
#最近トシで目が衰えてきたので将来に不安を感じてるAC
Re:懐疑的 (スコア:1)
その為に音読ソフトウェアがあるんじゃない?
最近のOCRの認識制度は非常に高いので、点字に翻訳などせずに、
スキャナで読み込んで音読させるほうが実用的ですね。
#触読が難しいのは麻雀で盲牌の訓練を積んだ人ならわかるはず。
Re:懐疑的 (スコア:1)
ただ、図表や数式や楽譜などの特殊文書や、盲聾者の存在なども考えると、音声化だけで全て解決というわけにはいかなくて、やっぱり触読文字に頼らざるを得ない場面もあるんですよね。
#なお、図表や数式や楽譜については点字での表記法が存在します。流石にソフトで自動変換、というわけにはいきませんが。
Re: (スコア:0)
これは、このプロジェクトに対するインタビューであって、盲目の人の為のシステム開発のインタビューじゃない。
つまり、点字の識字率の話をここで出してもしょうがない。
それに読めば分かるが、ターゲットユーザーには盲目の人とはうたわれていない。
(点字を勉強したい人の中に、盲目の人が含まれる可能性はあるが)
そこをふまえて、なぜこのインタビューで、「点字で出力する」のと「盲目の人が使える」のはだいぶ違う、という事に言及しなければいけないのか、教えてほしい。
Re: (スコア:0)
目が見える人こそが点字システムをつかうべきであると言うのであれば、あなたがそれを示してください。
>まるで、知らないやつは口を出すな、とでもいわんばかりのこの一文は
知らない人は、まずは勉強してください。勉強した方の言うことにはいくらでも答えます。勉強しないでいう言葉は、時にはただの暴力になります。
Re:懐疑的 (スコア:1)
親コメさんの書き方だとどの意味にも取れてしまうので、真意を伺いたいところです。
>敷居
「視覚障害者向けのシステム開発に携わるつもりなら、ちゃんと勉強してからにしてほしい」というご意見であれば賛同できる部分もないではないですが、それは#1343551さんのケースには当てはまらないと思います。
世の中、皆が皆#1344303さんのように福祉に対する高い志を持っているわけではありませんし、持てというのも(残念ながら)無理な話と思われます。そんな中、ひょんなきっかけで福祉に関連する話題に興味を持った人の発言に対して、上から目線で門前払いを食らわすような返答をすることは、その人がより福祉に興味を持ってくれるきっかけを潰すのには役立っても、福祉の充実に繋がる効果は期待できないのではないでしょうか。
#1343603さんの という発言も、私と同じような気持ちの現れなんじゃないかなぁ、と勝手に想像しています。
Re: (スコア:0)
「CUIで点字と墨字(点字ではない普通の文字)の相互変換をするプログラム」は一般的に言っても目が見える人が使う事を想定していると思います。 このソフトに関して言えば
少なくとも盲目でない人が対象外であるということはないと思います。
また、このソフトが「点字シス
Re: (スコア:0)
ではもう一度お尋ねしますが、「盲目の人が使える」とは何を使う事を指していますか? コンピュータですか、それとも出力された点字を理解できる事を指して「使える」と表現しているのでしょうか?
Re: (スコア:0)
まずは盲目の人と交わりましょう。
Re:懐疑的 (スコア:1)
学生時代は複数の盲学生と徹夜で呑んだり、盲人の友人と一緒に行ったレストランではメニューを読み上げカラオケでは画面の歌詞を読み上げ、
大学を出てからは某視覚障害者スポーツ(晴眼者も一緒にプレイできる)のチームに所属して、多少ペースが落ちた現在でも月一ペースで全盲や弱視のチームメイトと一緒に試合に出ていて、これでもかというぐらい接点を持っていますし、
システムという話では、前述の点訳サークル交流会で視覚障害の参加者も交えて行うオリジナルのゲームを考えたり、他にも当方の結婚式に視覚障害のチームメイトを招待した際や、試合でチームメイトと連係プレイを決めるときなど、「どうやったら視覚障害を持つ人にとって使いやすく/わかりやすく/心地よくなるか」を考えた経験は他の方々と比べて決して少なくないと自負しておりますが、
そんな私でも「盲目の人が使える」の真意については#1343506さんが改めて説明される方が明快でよいのではないかと思いますよ。
点字の意味云々以前に、単なる日本語の記述と読解に関する問題ですから。
#障害者と接すれば人間性が向上するとは限らない、と身をもって実証しているのでID
面白そうだけど… (スコア:0)
Lisp処理系を今後も使うというユーザは限られているでしょうから、これ的な
http://d.hatena.ne.jp/authorNari/20080422/1208880928 [hatena.ne.jp]
windowsにインストール一発で動く全自動版も用意した方が、ユーザも喜ぶんで
は無いかと。私は喜びますよ、勿論。
Lispって、そういうのあるんでしたっけ?
Re:面白そうだけど… (スコア:1)
インストールや設定が難しいのならVMのイメージで配布してしまう形があります.
例: 日本語TEX&EWB組版システムをダブルクリックで使う本 [yodobashi.com]
Re: (スコア:0)
そういや (スコア:0)
選択基準 (スコア:0)
マイナーなプロジェクトでも、取り上げられたことにより注目されてユーザや開発者が増えるかも知れないので面白い試みだと思います。
++ダウンロード数 (スコア:1)
で、学生時代に点字翻訳サークルで活動していて、ちょうど最近Lispの勉強を始めた私にとっては渡りに舟と思い、早速ダウンロードしてきました。
暇があったらソースファイルを読んでみたいと思います(が、当方プログラムに関しては素人なので、アドバイスなどは期待しないで下さい>作者さま)
Re: (スコア:0)
ちょっと切ないな…w
まずこのページの一番上を見てくれ。
「Slashdot Japan」って文字の隣りに「SourceForge.JP」って書いてあるのが見えるだろう?
Re: (スコア:0)
え?「点字」でぐぐったんですよ?信じてください。
Re: (スコア:0)
Re: (スコア:0)
Lispだったら素人のほうがかえって先入観 [practical-scheme.net]なしに読めると思いますよ。かくいう私は「ほげ言語」のパラドックスに縛られてLispのソースは読む気になれません。