米国・マサチューセッツ州の最高裁判所は4日、視覚障害者の男性がUberに差別的な扱いを受けたと訴えている裁判で、Uberの利用規約を原告に強制することはできないとの判断を示した(
裁判所文書: PDF、
Ars Technicaの記事)。
原告は盲導犬を伴った乗車を3人のUberドライバーに拒否されたため、違法な差別的扱いを受けたとしてUberを訴えている。Uber側は利用規約に従った調停を申立て、下級審では2017年に申立を認めた。調停人は原告の被害を認めたものの、ドライバーがUberの従業員ではなく、Uberに責任はないと判断する。同時期に連邦巡回区第1控訴裁判所ではUberの利用規約が無効との判断を示しているが、原告はこの時点で調停無効などの申立を行わなかった。
しかし、Uberが調停内容の承認を求める申立を2018年9月に行ったのち、原告は連邦控訴裁判所の判決などを挙げて再考の申立を行う。判事は2019年1月、最初の判決で調停を命じたのは誤りであり、利用規約による有効な契約は成立していないとして原告の申立を認め、Uberの申立を却下したため、Uberが上訴していた。Uberの主張としては、a)原告が調停内容について30日以内に異議申立を行わなかった、b)事実関係や法律に変更がないため判事に再考の権限がない、c)利用規約は契約として有効、といったものだ。
州最高裁ではa)について、Uberが挙げる判例は連邦レベルのもので、マサチューセッツ州の法令は異なるため、異議申立が30日以内に行われる必要はないと判断。b)については最終判決まで判事は過去の判断を再考し、誤りを修正する権限があると判断している。c)については、原告が使用したUberアプリのユーザー登録画面に問題があり、原告が利用規約に合意したとはいえないと判断した。
問題点としては、登録画面の「アカウントを作成すると利用規約およびプライバシーポリシーに合意したことになる」というテキストのうち、「アカウントを作成したら合意したことになる」という部分が目立ちにくいこと、利用規約を確認しなくてもアカウント作成を完了できること、ボタンなどで明確にユーザーの合意を求めていないことが挙げられている。Uberのドライバー登録画面では少なくとも2回は「合意する」ボタンをクリックする必要があるとのことで、明確な合意を求めることの必要性をUberが認識していたのは間違いないとのことだ。