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こういった論文のうち大規模なもの(スラドとかに紹介されるようなもの)は、ほぼ間違いなく、いわゆるコホート研究と呼ばれる手法でやられています。これは人数では日本最大級(長崎広島コホートの方が大きいですが)であるJPHCコホート研究 [ncc.go.jp]の成果の一部です。元論文はこちら(詳しくないけどIF見る限りこのジャンルで中堅程度はある雑誌らしい)。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279715000964 [sciencedirect.com]
簡単に言うと、ある時点である集団(この試験の場合は1990年頃に岩手から沖縄まで在住の9万人の日本人)をピックアップし、生活習慣や病歴などを徹底的に調査します。その後長期間(この試験の場合は19年間)勝手に生活してもらって追跡し、病気の有無や死亡率を調べます。その後、いわゆる多変量解析を行って、生活習慣のどの要素が、どの程度独立して寿命や健康に影響しているのかを調べます。
NOBAXさんが疑っているような、「コーヒーとは別の生活習慣の因子が紛れ込んでいるだけ」という現象は「交絡 (confounding)」と呼ばれ、この世のどんなへっぽこ疫学研究者でも絶対に知っている話です。極端な例として、「日常的にスカートを穿く人間は穿かない人間より寿命が数年長い」という相関があっても、当然それは性別による交絡であり、男がスカートを穿くと寿命が数年延びるわけではありません。
> The association between green tea consumption and risk of all causes and major causes of mortality> was assessed using the Cox proportional hazards regression model with adjustment for potential confounders.
交絡因子の候補として彼らは年齢・性別はもちろん、高血圧や糖尿病から運動習慣、喫煙、肥満、飲酒などについて一通り検討項目に入れています(一方でこの論文は「収入」を直接検討には含めていません)。これはつまり、性別年齢喫煙飲酒肥満血圧運動習慣といった、この研究で調べた限りの健康に寄与しそうな他の要素が全く同じ人間が仮想的に1000人いたとしても、緑茶やコーヒーの摂取量の差だけで独立して病気のリスクに差があるようだ、という意味です。ちなみに同じコホートでは米飯食の習慣に関しては疾患との有意差を見いだせなかったそうです。
従ってNOBAXさんが一刀両断しているようなあまりに安易な仮説は棄却して構いませんし、日本最大級の疫学研究に対するものとしては悲しすぎるコメントです。ただし事前調査に含まれていない別の交絡因子がある可能性、例えば「緑茶を飲む人は特別に高収入なので、結果的に高度な医療を受けて寿命が延びている」とか「緑茶を飲む人がよく一緒に食べている和菓子の方が実は真に病気を防いでいる」という可能性をこの論文だけで理論的に否定するのは確かに困難ですが、そこは常識と照らしつつ判断していくことになります。
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にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー
原因と結果が逆 (スコア:4, すばらしい洞察)
コーヒーや緑茶を日々嗜むような人は健康でリッチな生活を送っている。
ということではないですか。
病気の人が「健康的な習慣」を楽しむことはないでしょう。
Re:原因と結果が逆 (スコア:2, 参考になる)
こういった論文のうち大規模なもの(スラドとかに紹介されるようなもの)は、ほぼ間違いなく、いわゆるコホート研究と呼ばれる手法でやられています。これは人数では日本最大級(長崎広島コホートの方が大きいですが)であるJPHCコホート研究 [ncc.go.jp]の成果の一部です。元論文はこちら(詳しくないけどIF見る限りこのジャンルで中堅程度はある雑誌らしい)。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279715000964 [sciencedirect.com]
簡単に言うと、ある時点である集団(この試験の場合は1990年頃に岩手から沖縄まで在住の9万人の日本人)をピックアップし、生活習慣や病歴などを徹底的に調査します。その後長期間(この試験の場合は19年間)勝手に生活してもらって追跡し、病気の有無や死亡率を調べます。その後、いわゆる多変量解析を行って、生活習慣のどの要素が、どの程度独立して寿命や健康に影響しているのかを調べます。
NOBAXさんが疑っているような、「コーヒーとは別の生活習慣の因子が紛れ込んでいるだけ」という現象は「交絡 (confounding)」と呼ばれ、この世のどんなへっぽこ疫学研究者でも絶対に知っている話です。極端な例として、「日常的にスカートを穿く人間は穿かない人間より寿命が数年長い」という相関があっても、当然それは性別による交絡であり、男がスカートを穿くと寿命が数年延びるわけではありません。
> The association between green tea consumption and risk of all causes and major causes of mortality
> was assessed using the Cox proportional hazards regression model with adjustment for potential confounders.
交絡因子の候補として彼らは年齢・性別はもちろん、高血圧や糖尿病から運動習慣、喫煙、肥満、飲酒などについて一通り検討項目に入れています(一方でこの論文は「収入」を直接検討には含めていません)。これはつまり、性別年齢喫煙飲酒肥満血圧運動習慣といった、この研究で調べた限りの健康に寄与しそうな他の要素が全く同じ人間が仮想的に1000人いたとしても、緑茶やコーヒーの摂取量の差だけで独立して病気のリスクに差があるようだ、という意味です。ちなみに同じコホートでは米飯食の習慣に関しては疾患との有意差を見いだせなかったそうです。
従ってNOBAXさんが一刀両断しているようなあまりに安易な仮説は棄却して構いませんし、日本最大級の疫学研究に対するものとしては悲しすぎるコメントです。ただし事前調査に含まれていない別の交絡因子がある可能性、例えば「緑茶を飲む人は特別に高収入なので、結果的に高度な医療を受けて寿命が延びている」とか「緑茶を飲む人がよく一緒に食べている和菓子の方が実は真に病気を防いでいる」という可能性をこの論文だけで理論的に否定するのは確かに困難ですが、そこは常識と照らしつつ判断していくことになります。